パキスタンは、対外債務への利払いと国防費の合計が国家支出の60%を占める財政難の中にある。そのため、世銀のコンディショナリティのもと、パキスタン政府による農業関連の補助金が続々と打ち切られている。灌漑・電力供給を行っていたWAPDA(Water And Power Development Authority)でも、利益のでる電力部門を独立させ、独立採算制への移行が進められようとしている。この灌漑関連機関の財政独立が予定通り行われることになれば、灌漑インフラへの資金が大幅に減少することになろう。このことはパキスタン農業に重大な打撃を与えることになる。既存の灌漑施設の維持・管理が困難になることはもちろん、「緑の革命」に代表されるような新農法の成立によって、一層の農業発展を図ろうとすれば、灌漑や土地改良などの農業インフラストラクチュアヘの膨大な投資が必要となるからである。