日本財団 図書館


 

た灌漑網が、その維持管理の悪さから塩害・湛水害の原因となっている点も少なくないと考えられる。
本調査は、パキスタンの農業においてパンジャブ州の農業生産が持つ高い重要性および同州で高い灌漑網の整備にもかかわらず深刻化しつつある、土壌の塩害・湛水害に注目してパンジャブ州を調査地として選定した。
パキスタンは、対外債務への利払いと国防費の合計が国家支出の60%を占める財政難の中にある。そのため、世銀のコンディショナリティのもと、パキスタン政府による農業関連の補助金が続々と打ち切られている。灌漑・電力供給を行っていたWAPDA(Water And Power Development Authority)でも、利益のでる電力部門を独立させ、独立採算制への移行が進められようとしている。この灌漑関連機関の財政独立が予定通り行われることになれば、灌漑インフラへの資金が大幅に減少することになろう。このことはパキスタン農業に重大な打撃を与えることになる。既存の灌漑施設の維持・管理が困難になることはもちろん、「緑の革命」に代表されるような新農法の成立によって、一層の農業発展を図ろうとすれば、灌漑や土地改良などの農業インフラストラクチュアヘの膨大な投資が必要となるからである。
本調査によるパキスタン経済の分析に基づくと、これらの農業生産に対する補助金の削減は、パキスタン農業生産の低下を引き起こし、パキスタン経済全体の発展に対する障害となることが予測される。援助供与国、国際機関からのパキスタンヘの協力は、その経済の健全化のために一層、農業発展に力点を置くべきであるとわかる。
現地調査は、パンジャブ州の中でも典型的な米、小麦作地帯としてSheikhupura県を調査対象地域と選定した。Sheikhupura県における農業生産性の格差は、主要水路、道路からの距離、地下水の質の差などよって生じる点が少なくない。そこで、具体的な調査村を選ぶ際に地下水の質の差と主要水路およびパンジャブ州の州都ラホールからの距離によってK村とA村を選定した。そしてK村とA村の農業生産力の差はこの水利条件の差に大いに基づくことがわかった。
現地調査はパンジャブ州農業省から提供された調査地の資料をもとに、フィールド・ワーカー、土地・水利代金を徴収し、土地台帳を管理しているパトワリーおよび農民に対する聞き取り調査を中心に行った。
調査地の選定においても述べたように、パキスタン農業の開発のためには、土壌の塩害、湛水害、およびそれらと不可分にかかわる灌漑の改善が必要である。

 

パキスタン国においては、援助に必要となる基礎的な調査そのものがかならずしも十分になされていないという実情があり、また、今回調査も地域的・期間的に限られており、そこで得られた資料は、パキスタン国全体に対する援助を具体的に記述するには十分ではない。しかし、我々が収集し得た資料に基づいたパキスタン国に対する

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION